成年後見人による横領が後を絶ちません。財産の状況や収支状況など、裁判所のチェックを受けて業務を実施するので、発覚しない可能性は極めて低いのに、何故横領などしてしまうのでしょうか。
こちらの弁護士さんは、地裁の判決ですが、懲役5年の実刑です。
成年後見制度を悪用して現金をだまし取ったなどとして、詐欺と業務上横領罪に問われた元弁護士島内正人被告(67)(元福岡県弁護士会北九州部会所属)の判決が24日あり、福岡地裁は懲役5年(求刑・懲役6年)を言い渡した。
岡本康博裁判官は、被告が2004年度に九州弁護士会連合会理事長を務めるなどして多忙になり、収入が減少したため犯行に及んだと主張していることについて、「弁護士への信頼を踏みにじり、財産をむしり取った言語道断の所業」と述べた。
判決によると、島内被告は10年9月~12年9月、北九州市の高齢女性の預金について成年後見人の弟に裁判所から指示があったと偽り、4400万円を自身の口座に振り込ませたほか、依頼人3人から預かった訴訟費用など約1370万円を着服した。
2013年12月24日 読売新聞
また、先の10月にも、成年後見人として預金計約4200万円を着服したとして、業務上横領罪に問われた東京弁護士会元副会長の弁護士松原厚被告(76)に対し、東京地裁は懲役5年(求刑懲役7年)の判決を言い渡しています。
専門職後見全体の信頼性に関わることばかりではなく、判断能力が弱くなった人を保護するための制度を悪用して、後見人が被後見人から経済的搾取をするのですから、これは極めて重罪です。極端な例えですが、警察官が保護した人を傷つけるようなものです。
何のための制度なのか、常に心しながら取り組む必要がありますね。また、定期的に、何のための制度なのか、誰のための制度なのかを専門職後見人自身がチェックする機会が必要だと思います。
2013-12-29追記
今年最後に、やはりあったかという記事が出てきました。
社会福祉士:成年被後見人の預金着服で在宅起訴 東京地検
成年被後見人の預金を着服したとして、東京地検は27日、千葉県野田市の斎藤義明社会福祉士(64)を業務上横領罪で在宅起訴した。
起訴状によると、斎藤被告は、成年後見人として60代男性の財産管理を任されていたが、2011年4月~13年3月の間、男性の預金口座から計19回にわたって計969万円を引き出して着服したとしている。
地検によると、このうち七百数十万円を私的に使い込んでいたとされる。後見人を解任されており、私的流用分を全額弁償したという。【近松仁太郎】
毎日新聞 2013年12月27日 20時58分
やはりチェック機能が果たされていないんでしょうね。
twitterでもコメントいただきました。
制度を利用する方が被害にあわないように、第三者?がチェック出来ると良いのかと思います。
本当にそうだと思います。後見人自身の研修制度や業務管理体制、説明責任などに加え、第三者の目がしっかり入らないといけません。私たち自身が本気で見直す時期に来ているのでしょう。
2014-01-07 追記
興味深いブログ記事を見ました。社会福祉士は法律問題に弱いので、法律家さんのお話はいつも、とても参考になります。
この記事のタイトルでは、懲役5年を「重罪」としましたが、人によっては気が済まない人もいるでしょう。「逮捕されて、より重い制裁を受けて欲しい」と思う人もいるでしょう。
弁護士成年後見人が横領で逮捕されないのはなぜ?
逮捕というのは逃亡・証拠隠滅の恐れがある場合にのみ司法警察職員に認められる人権侵害行為ですので、(現行犯の常人逮捕を除く)別にイヤガラセや見せしめで逮捕するものではありません。――(中略)――ましてや逮捕=犯人ではありません。
弁護士成年後見人が横領で逮捕されないのはなぜ?――行政書士 大田法務事務所@稲田堤のブログ
つまり、逮捕を経ずに、検察が起訴または起訴猶予処分、不起訴処分をします。起訴されれば裁判になるわけです。
また、起訴猶予または不起訴になる場合でも、被害の弁償や弁護士会の処分、つまり社会的責任、加害者の反省度合などを考慮するわけですので、ただで済まされるわけではありません。これらがなければ起訴される可能性は十分にあるわけです。